エリザベス1世

エリザベス1世

メアリー1世

メアリー・テューダー

実は戴冠式の前から、既に両者のせめぎ合いは始まっていた。それはエリザベスが自分より華があって周囲の目を惹いている、と言うような「女の嫉妬」の感情ではない。もっと重要で根深いもの、二人の信仰の違いである。メアリー・テューダーはカトリック、エリザベスはプロテスタント。義理の姉妹という関係が無ければ、両者は決して相容れることも、関わることもなかったかもしれない。

確かにメアリー・テューダーの一連のクーデタの裁きに対して、「慈悲深い君主」を演じて、寛大な措置を施した。プロテスタントであった政治犯にも、心広く振る舞った。だがそれだけで、彼女の心の奥底までが変わってしまった訳ではない。メアリー・テューダーは根っからのカトリック信者であり、彼女をここまで突き動かしてきた要因となるものは、不幸な王宮生活を強いられた母キャサリン・オブ・アラゴンの恨みを晴らし、離婚という低俗な問題で捻じ曲げられてしまったイングランドの信仰を元に正すことである。伯父である神聖ローマ皇帝カール5世やその特使シモン・ルナールの助言もあり、最初は控えめに大人しく、穏便に始めていくが、彼女自身は国教会が出来たのだから自分もプロテスタントへ改宗、などという気は毛頭なかった。むしろイングランドをまたカトリックの国に戻して、ローマ教皇と和解することが目的の一つでもあった。そのためにはまず手始めに、一番手を付けやすいのが義妹エリザベスの信仰を正すことである。

(以下、次回に続く)