ヨーロッパ1500年代

神聖ローマ皇帝カール5世の特使シモン・ルナールが、なぜ外国の、しかも20歳になったばかりの若いプリンセスのことにこれだけ躍起になるのか?これにはヨーロッパ大陸の情勢と、ハプスブルク家の思惑も絡んでいる。

この時代のヨーロッパ情勢の基軸となるのは、カール5世のハプスブルク家とフランス・ヴァロワ家の対立。ハプスブルク家は東の神聖ローマ帝国と西のスペインから、フランスを挟み撃ちする形勢である。がしかし、その神聖ローマ帝国の方は1517年のマルティン・ルターによる「95か条の提題」以来、宗教改革の渦が巻き起こって混乱の極みに達しており、しかも一部のプロテスタント諸侯は宿敵であるフランスから支援を受けて、皇帝に抵抗を続けている。またカール5世は自分の年齢のこともあって退位を視野に入れており、本家オーストリアと神聖ローマ帝国は弟フェルディナントに、スペインとイタリア、新大陸の広大な領土は息子のフェリペに継承させる予定でいる。つまりこれまでカール5世が一人で兼ねていた広大な領土が、スペイン系とオーストリア系に二分されることが確実であり、その連係が従来よりも更に重要になってくる。しかも宿敵フランスは、帝国内のプロテスタント諸侯のみならず、異教徒であるオスマン・トルコ帝国とも手を結んで、ハプスブルク家の本家オーストリアに脅威を与え続けている。

そこで白羽の矢が立ったのがイングランドである。地図を見れば明らかなように、宿敵フランスに北から脅威を与えられるのはイングランドのみ。イングランドが確固としたカトリックの国に戻って自陣営に取り込むことが出来れば、北→イングランド、西→スペイン、南→イタリア、東→神聖ローマ帝国と、四方からフランスを取り囲む形勢になる。フランスを征服するのは難しいが、脅威を与え続けて大人しくさせることは出来る。

(以下、次回に続く)