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清く図太くしたたかに!

3日で読めるトップが強運であり続けるための『人間学読本』

ヨーロッパ英雄史小説作家・小園崇文です。

「デキるリーダーは歴史に学ぶ!ヨーロッパ史を図太くしぶとく生き抜いた強運な王たちの物語」

フリードリヒ3世は1415年9月21日、オーストリアはインスブルックという所で、ハプスブルク家一族として生まれます。父エルンスト、母シムブルキスは共に頑健な身体の持ち主。後にフリードリヒの人生において最大の武器となったものは、この両親に拠るところが大と言えるでしょう。しかし本人も、持って生まれた資質にだけ頼っていた訳ではありません。それはいずれまた述べましょう。

ところでインスブルックのあるチロル地方は、諸事情により父エルンストの領地ではなく、弟フリードリヒのもの。そのため弟に気を使って、我が子にも同じフリードリヒの名前を付けました。

余談ですが、有名な「チロルチョコ」は松尾製菓の2代目社長が、チロル地方の美しく雄大な自然に感銘を受けて、このアルプス山麓の大自然をイメージして名付けられたものだそうです。

さて父エルンストはフリードリヒが9歳の時に死去。叔父に当たる父の弟フリードリヒの後見を受けることになります。叔父の下で何となく肩身の狭い暮らしが続きますが、そんな叔父もフリードリヒ24歳の時に死去。血筋から行けば叔父の息子ジークムントが跡継ぎですが、この時まだ12歳の子供。一方、24歳になって「一応」いっぱしの大人になっていたフリードリヒがジークムントの後見人となり、人生最初の「棚からぼた餅」チロル地方を手に入れることになります。

同じく24歳の時の1439年、今度は従兄弟にあたるアルプレヒトが神聖ローマ帝国皇帝、さらにはハンガリーとボヘミア(現在のチェコ共和国西部あたり)の王になります。このアルプレヒトという人は、能力もあってヤル気満々。しかし運命の神様は時に皮肉。アルブレヒト皇帝、この時徐々にヨーロッパの脅威となりつつあったオスマントルコとの戦争において死亡。それが名誉の戦死ならともかく、赤痢にかかって病死という、何とも哀しい結末。

地図は現代オーストリアのもの。チロル地方はオーストリア西部(地図で言うと左側)の細くなっている辺り。ハンガリーはオーストリアの右隣。ボヘミアは、チェコ共和国のおおよそ水色線から左部分、ドイツとの国境付近まで。ボヘミアングラスで有名な所です。

このアルプレヒトの死によって、その嫡男ラディスラスが皇帝位を継ぐ…。はずなのですが、父の死から4か月後に生まれた赤ん坊だけに、当然ながら統治能力なし。そこでフリードリヒがまたもや後見人に選ばれ、本人の努力は全くゼロ!であるにも関わらず皇帝に即位。以後、紆余曲折はありつつも、その死までの53年間、皇帝位を「死守」し続けました。

この時フリードリヒが皇帝の後見人に選ばれた理由というのは、ただ一つ!すなわち「無能」だったから(笑)。なまじっか有能な人間に皇帝になられると、やりづらくてしょうがない。逆に箸にも棒にも掛からぬ「無能」な奴が、ともかくも後見人として皇帝になってくれた方が、上手く扱いやすい。というのが、帝国内の有力貴族たちの偽らざる本音。無能が故に生き延びることもある。有能な人が出世するとは限らない。いやはや政治も人生も、複雑なものです…。

で、皇帝位は何とか手に入れたものの、他のハンガリー王位やボヘミア王位は、そうは上手く行かない。お腹を痛めて産んだ母が、「わが子をハンガリー王にも」と横やりを入れて来ます。一方フリードリヒも、ラディスラスはいわば「打ち出の小槌」。この子の後見人はオレ!とばかりに放さず、ラディスラスの母との内輪もめが勃発。それを見透かしたハンガリーの貴族たちが、対トルコ戦の英雄でもある勇将・フニャディを摂政=事実上の国王に。さらにその子マティアスはさらに有能かつ勇猛で、ハンガリーどころか、ハプスブルクの本家本元・ウィーンまで乗っ取られてしまう始末。しかもフリードリヒは一切戦うことなく、「逃げた」…。まあ両者の能力差を考えたら、「逃げる」ことはある意味、賢明な判断ではありましたが…。

もう一方のボヘミアも、同じような形で追い出され、ハプスブルク家とフリードリヒは、ハンガリー・ボヘミアという、ヨーロッパ中部の要衝の地を一度に失う羽目に。

金無し・能無し・意気地無しの「三拍子揃った」ダメ男が、「棚から牡丹餅」の連続で各地の王位や神聖ローマ帝国皇帝に昇りつめましたが、そうそう上手い話ばかりが続くほど、人生は甘くありません。

この後、このフリードリヒ3世がどのような悪運の強さ、しぶとさ、粘り腰、そしてこれらをひっくるめた「強運」を発揮して、このピンチを乗り切っていくのか?

この続きは、次回のお楽しみ(^-^) 1週間後に配信いたします!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!