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●イングランドと結婚した女王

「アルマダの海戦」の際、エリザベス1世は女王として野営地に乗り込み、そこで将兵たちを前にして、史上名高い演説を残しています。全文書くと長いので、一部を抜粋しますと、

「今、私はこうしてあなた方の元にやってまいりました。気晴らしのためでも娯楽のためでもなく、わが身を戦いの真っただ中、戦いの熱気の中に置き、皆様と生死を共にするためです。我が神のため、我が国家と我が民のために、我が名誉と我が血を塵と化し、死ぬ決意できたのです。私は脆く弱い肉体を持つ女性ですが、王の、それもイングランド王の心と勇気を持っています。(中略)皆様がここに駆け付けたことは、既に褒章や報奨金に値します。王としての言葉を信じてください。皆様はやがて報われるでしょう。(中略)やがて神と我が王国と我が民と敵が倒され、赫々たる勝利を収めるでしょう」(訳文・石井美樹子『エリザベス・華麗なる孤独』中央公論新社より)

この演説が終わった後、その場には大歓声が沸き起こり、将兵の指揮大いに上がって、感動で涙に咽ぶ者も多数いました。側近が止めたにも関わらず、「ここは天下分け目の大一番!」という気合いと危機感がそうさせたか。日頃「のらりくらり」が多いエリザベス1世にしては、珍しく果敢な行動でした。当時ヨーロッパ最強と信じられていたスペイン海軍、通称「無敵艦隊」との決戦を前に、正直怖気づく将兵もいたでしょう。そんな将兵たちの前に女王陛下が現れた。その効果は絶大でした。

「アルマダの海戦」が終わった後も、スペインの覇権が崩れて、イングランドがいきなり「大英帝国」になった訳ではありません。相も変わらずネーデルラントではスペインの軍隊が猛威を振るっていましたし、それに対してイングランドはまだ独力で対抗できる力はありませんでした。しかし後から歴史を振り返ってみると、「あれがスペイン没落の始まり」と呼べるのが、「アルマダの海戦」でした。

これ以後、ヨーロッパの国際関係は小康状態を保ちます。超大国とは言えども、スペインも実は財政が火の車。フェリペ2世は生涯3度も自己破産して、終いには各国の銀行もかなりの高利でないとお金を貸してくれなくなりました。そして1598年、フェリペ2世死去。スペイン黄金時代の最後の国王。ヘンリー8世に負けず劣らず4回も結婚した王ですが、なぜか後継ぎには恵まれず、やがてスペインの王室は一度血が途絶えます。原因は近親婚を繰り返して段々と遺伝子が弱くなり、生まれながらに極度の虚弱体質や何らかの疾患を抱えた子供ばかりが生まれるようになったのが原因。ここでも寛容に、色々なもの受け入れる教訓が学べます。

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エリザベス1世、晩年はロバート・デヴローという若いイケメン貴族を寵愛したりと、それなりの楽しみも得ますが、一方で国の財政は火の車。それでも大多数の国民が彼女を支持したのは、苦労に苦労を重ね、数々の逆境を乗り越えて王位に就き、スペインを撃ち破って大いに国威を上げたからか。弱小国ながら、そして圧倒的に「男の世界」である政界で、女性のみでありながら、どうにか45年もの長い治世を乗り切り、イングランドの地位を押し上げた手腕は見事でした。

エリザベス1世を破門にしたローマ教皇でさえも、「彼女は悪魔。どの国の君主も彼女を恐れている」と、「敵ながら天晴れ!」という評価を下していました。紛れもなくこのエリザベス1世の時代が、後の「大英帝国」への礎となりました。

最後の議会演説でも、後に「黄金の演説」と評される名演説をしたエリザベス1世は1603年3月24日、死去。69歳。既に述べたように枕元にはかつての「恋人」ロバート・ダドリー卿の手紙がありました。この女王の心を一番占めたのは、何だかんだ言ってもロバート・ダドリー卿だったようです。ですが遂に生涯で一度も、結婚をすることはありませんでした。もちろん後継ぎも生さず。ということは、次の国王は…。

エリザベス1世が跡継ぎを遺さなかったため、ここでテューダー朝は終焉。次の国王は皮肉にも、憎き宿敵メアリー・ステュアートの子供にして、スコットランド国王ジェームズ6世がイングランド国王を兼ねることになりました(イングランド国王としてはジェームズ1世)。

メアリー・ステュアートの最期の言葉、「あなたはいつの日か私が流した血を思い起こす」。その言葉は、メアリー・ステュアートの子供がイングランド王位を継ぐ、という形で現実になりました。母があれだけ望んだイングランド王位を息子が手にする。これもまた運命の皮肉です。

側近たちに結婚をするようせがまれて、「私はイングランドと結婚しました」と述べたエリザベス1世。子を残さなかったことが、逆にイングランドとスコットランドの連合を推し進め、後の「大英帝国」、そして「イギリス」という国の複雑怪奇なややこしさを決定的にしました。

続きは次回に。また1週間後の配信です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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