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アンリ4世

●とんぼ返りを打つ!

アンリ3世が跡継ぎを遺さずに死去したことにより、名実ともにヴァロワ朝は断絶。ここで遂に王位継承順位の筆頭にあるアンリが即位。「アンリ4世」となってブルボン王朝が創始されます。以後は、この作品でも「アンリ4世」と呼びます。このブルボン王朝が、ご存知フランス革命でルイ16世とマリー・アントワネットが断頭台の露と消えるまで約200年続きます。

しかしこの時点では即位と言っても、本当に形式だけ。そもそもアンリ4世とユグノーの勢力範囲は、アンリ4世のお膝元ナヴァール王国にワインで有名なボルドーとその周辺都市、南仏の数都市などごくごく限られた範囲。まだまだ「カトリック同盟」を支持する都市・地域の方が圧倒的。だけど何と言っても、首都パリが「カトリック同盟」の牙城。パリを手中に収めない限り、アンリ4世はいつまで経っても「国なき王」のまま。逆にパリを手にすれば、他の地域はどうにでもなる。

一方の「カトリック同盟」も、アンリの伯父であるブルボン卿を「シャルル10世」として傀儡の国王に据えて抵抗。フランスは「三アンリの闘い」から「二人の国王」が並び立つ事態に。カトリックとユグノー陣営の戦闘も各地で止まず。カトリックにはローマ教皇やスペイン、ユグノー陣営にはイングランドやネーデルラント、ドイツの諸侯などが支援を加え、内乱が終わる気配が全くなし。

フランス国王が正式に国王として認められるためには、ランス大聖堂で戴冠式を行うのが習わしですが、このランスもまた「カトリック同盟」の勢力下にあるため、それも出来ず。国王になっても王宮すらなく、相も変わらず馬の背に乗って戦場を駆け回る日々が続きます。ノルマンディなど攻めやすい所を攻めては、再びパリに矛先を転じ、それが無理ならまた地方を転戦。そんなことを繰り返している中の1590年5月、傀儡の王である「シャルル10世」死去。「カトリック同盟」側も決め手を欠き、一進一退の膠着状態が続きます。この時期にアンリ4世、断腸の思いで「パリ封鎖作戦」を断行。食料供給ルートを遮断されたパリには、餓死者があふれるようになりますが、やがて「カトリック同盟」側の食糧支援も届くようになり、この封鎖作戦も失敗。

そんな中でも、アンリ4世にはちゃっかり愛人がいます。改めてご確認。一応アンリ4世にはマルグリートという正式な妃がいますが、もうすでに仮面夫婦になって久しく、顔を合わせていない時間の方が長いぐらい。そんな時に現れたガブリエル・デストレという小貴族の娘に一目惚れ。最初にフラれてしまったのが更に恋心に火を点けたか、その後も猛アタックを繰り返し、遂にパリよりも先にガブリエルを落とします。しかしこのガブリエル、ただの愛人ではなく知的で教養あふれ、しかも「カトリック同盟」側の貴族の何人かとも通じており、アンリ4世にとっては秘密外交官・スパイの役割も果たすことに。

ガブリエル・デストレ

1593年1月、「カトリック同盟」によって全国三部会が招集されるも、同盟の支持者以外に集まらず。この三部会ではスペイン王フェリペ2世の圧力によってその娘、カタリーナをフランス王にという話しに傾きかけます。言い分としては、カタリーナの母エリザベートはアンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの間の娘。つまりはこれまでのヴァロワ朝の王たちの兄妹であり、その血を引くカタリーナは王位継承者にふさわしいというもの。再度の取って付けたような推薦も、やはりまた国内の支持を得られず。血を引くとは言え今や敵国スペインの王女をフランス王に、というのが誇り高きフランス人たちには受け入れられなかったか。

大多数の穏健派カトリックの人たちも、もはや国王にふさわしいのはアンリ4世しかいないことは分かっているのです。心の底ではアンリ4世が好きなのです。支持したいのです。ですが一点だけどうしても譲れないことが。それは「カトリックへの改宗」。これだけは呑んでもらわなければ国王としては受け入れられない。一方アンリ4世の側近たちも、現実路線への転換から国王の改宗を支持。信者数・支配している地域を考えれば多数派なのは圧倒的にカトリック信者。ユグノーが国王に就いてフランスが上手く治まるか?という至極当然な考え。おまけに愛人のガブリエルからも改宗を勧められ、その返事の手紙で送ったのが…、「とんぼ返りを打つことにする」。つまりは改宗の一大決心!

今度の改宗、回数だけで言えば5度目。しかし今度の改宗が持つ重みは、これまでのものとは全然比べ物になりません。今までのは子供だったり、一地方の王だったりと、立場はまだ身軽。だが今のアンリ4世は押しも押されぬフランス国王。その国王がこれまでの信仰を改宗するというのだから、その影響力や甚大なるもの。ですがこれ以上内乱が打ち続いたら、本当にフランスは滅びてしまう。外国勢力の草刈り場になってしまう。更に多くの人命も失われる。それを考えたらこれまでの信仰を改宗するぐらい、どうってことない!その一大決心をアンリ4世は、「とんぼ返りを打つ」という、さもお気楽な遊び感覚のように表しました。さすがは「テキトー」なアンリ4世。真面目で頭がガチガチの信者であったなら、こういう芸当は出来ません。

このアンリ4世の、ある意味では「命をかけた一大決心!一大改宗!」これが戦乱が打ち続き、瀕死の状態にあったフランスと、長引く戦乱に辟易していたフランス人を崩壊の淵から救うことになります。

続きは次回に。また1週間後の配信です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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