プロローグ 最初のヨーロッパ大戦

読者の皆様の中には、1648年に締結された「ウェストファリア条約」というのを、聞いたことがありますでしょうか。世界史の教科書には必ずと言ってよいほど載っていますので、記憶の片隅には残っているかもしれません。

ここに出てくる「ウェストファリア」というのは英語読みでして、ドイツ語では「ヴェストファーレン」となります。ヴェストファーレンというのは都市名ではなく、もう少し広い地域を指す言葉で、ドイツ西部のドルトムントやミュンスターなどが含まれる地域です。「ヴェストファーレン条約」というのは正確に言うと、この地域内のミュンスター及びオスナブリュックでそれぞれ締結された条約を総称して、「ヴェストファーレン条約」と呼びます。

ヴェストファーレン(ウェストファリア)会議

この「ヴェストファーレン条約」というのが、今に続く近代国際関係の大元になった条約とされています。どんな大元になったかと言いますと、「主権を持った国家同士が、対等な立場で話し合って、今後のヨーロッパの国際関係を決めていこう」ということです。これがヨーロッパだけではなく、もっと世界的規模に広がったのが、現代の国連を中心とした国際関係になります。もちろんそこには綺麗ごとだけでは済まされない、大国と小国との力関係というシビアな現実もありますが、一応の建前上はアメリカや中国のような広大な国土と膨大な人口を抱える大国も、モナコやシンガポールのような一都市レベルの小国も、対等な主権国家です。

では、この「ヴェストファーレン条約」が締結された原因となったのが、1618年から48年にかけて断続的に戦われた、文字通りの「三十年戦争」になります。それまでの戦争は主に王侯同士の陣取り合戦のようなもの。所期の目的が達成されれば、大概は適当なころ合いで手打ち。戦場で戦う兵士も、大半は金で雇われた傭兵。彼らは徹頭徹尾、金のために戦争する「戦争のプロ」。そこに愛国心なんてものは全く無し。王侯から給料の支払いが一日でも遅れれば、もう身を危険にさらして戦うなんてことはしません。戦っている最中も、傭兵同士はあちこちの戦場で顔見知りの場合が多く、言ってみればお互いわが身がかわいい身。お互いの「商売」のために死ぬまで戦うなんてことはせず、「今回はこの辺りで…」と適当な頃合いで手打ちにして、「じゃあ、またどこかの戦場で…」なんてことが平然と行われていました。良い悪いは抜きにして、そこにはプロ同士の持ちつ持たれつがあって、その微妙な機微によって、戦争の泥沼化は避けられていました。

この「三十年戦争」がそれまでの戦争と、様相が一変してしまった最大の要因は「宗教」。1517年の「宗教改革」によって端を発したカトリックとプロテスタントの対立は、年を重ねるごとにのっぴきならない状態となり、それがこの「三十年戦争」が長期間に渡って泥沼化してしまった、最大の要因です。現代の宗教対立を見ても分かるごとく、頭に血が上って「異端を最後の一人まで…」となってしまう宗教戦争は、「この辺りでやめておこう…」というブレーキを、いとも簡単に取っ払ってしまいます。そこには傭兵たちが持ち合わせていた「適当な頃合いで…」という、良い意味での「いい加減さ」はありませんでした。甚大な被害が出た後に、「もうこれ以上こんな戦争はやめにしよう」ということで結ばれたのが、「ヴェストファーレン条約」。この条約によってプロテスタントとカトリックがともかくも共存することが認められ、オランダとスイスの独立が認められ、「宗教と政治は別々に」という原則が認められ、そして教会よりも「国家」が上位に来ることが認められました。

主に神聖ローマ帝国(ほぼ現在のドイツ)を主戦場として戦われたこの戦争によって、特に今のドイツの地は甚大な被害をこうむり、それは「神聖ローマ帝国の死亡診断書」と呼ばれました。そして国土も民心もバラバラになったドイツは、統一国家が成立するのが2世紀はイギリスやフランスに比べて、2世紀は遅れてしまいました。

この作品の副題には、「ヨーロッパの応仁の乱」と付けました。日本では応仁の乱によって、既成の秩序がほぼ崩壊されて、戦国時代へと入っていきました。ヨーロッパでもこの「三十年戦争」によって、それまでのローマ教皇を頂点としたカトリック普遍主義は、ほぼ崩壊し、各国の君主がその国内では絶対的な主権者となる「絶対王政」の端緒となり、戦争は「宗教」を巡るものから、「国家」の利害を争うものへと変質していきました。

歴史上、第1次・第2次世界大戦と呼ばれる戦争があります。どちらもヨーロッパが主戦場となっていますが、ヨーロッパだけに限ればこれらはそれぞれ第3次・第4次になる、というのが筆者の解釈。では本当の第1次大戦は?というと、この「三十年戦争」。第2次が「ナポレオン戦争」です。この作品では「最初のヨーロッパ大戦」である「三十年戦争」を戦い抜いた国王・皇帝・軍人の活動を通して、21世紀の今を生き抜くために役立つ「何か」を書き進めながら見つけていくことを主眼としています。どのような展開になっていくかは筆者も想像がついておりませんが、最後までお付き合いをいただけますと幸いです。

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