第1章 きっかけは「宗教改革」

☆1492年と1517年

この作品で扱っていく「三十年戦争」の、そもそものきっかけとなっているのが、「三十年戦争」に先立つことちょうど百年。1517年の、多くの方が単語ぐらいはきおくされているであろう「宗教改革」。そこでまずは、この「宗教改革」と呼ばれる事件とは、一体何だったのか?ということを振り返っておきます。

そもそもこの16世紀のヨーロッパにおいて、「宗教」と言えばキリスト教、それもカトリック以外にはあり得ません。イベリア半島にあったイスラム勢力を、スペインのカトリック両王・イサベル1世とフェルナンド2世が「レコンキスタ(国土回復運動)」によって、完全に追い出したのが1492年。同年にコロンブスが新大陸を「発見」したこともあり、これ以後、スペインとポルトガルは本格的に海洋進出に乗り出すことになり、キリスト教勢力とイスラム勢力のパワーバランスは徐々に変わり始めます。それまでは世界の片田舎でしかなかったヨーロッパが、段々と世界の中心になっていく端緒となるのが、この1492年。

今でもスペイン南部のアンダルシア地方や、イタリアのシチリア島などにイスラム風の建築が遺っているのはその名残。またスペインやイタリアには、外見がいわゆる「金髪碧眼の白人」ではなく、同じ白人でも髪も目の色も黒、バグダッドやカイロ辺りにいても全然違和感のない容貌の人が多いのは、明らかにこの地にかつてはイスラム教徒が生活していた時の遺伝子の名残でしょう。

また「レコンキスタ」を機に、カトリック教会による「異端尋問」も厳しさを増し、特にそれを一番生真面目にやったスペインでは、商売人としても有能な人が多かったイスラム教徒やユダヤ人を大弾圧。それを逃れて、特にユダヤ人は比較的緩やかなイングランドやネーデルラントに亡命します。これらユダヤ人を国内から追い出してしまったことがスペインの覇権を短命なものとし、逆に彼らを受け入れたネーデルラント(特にオランダ)やイングランドは、彼らの能力を上手く活用してやがてはスペインに代わって覇権を握っていくことになります。

☆我が世の春を謳歌するローマ教会

キリスト教世界800年来の宿願であった「レコンキスタ」を達成し、ヨーロッパ内にはひとまず大きな敵がいなくなったローマ教会。ところが敵の存在が消えてしまうと、人間は緊張感を失くして自堕落になってしまうか、歯止めが効かなくなって横暴さを増していくかのどちらか。前者の例は帝政ローマ、後者の例は冷戦勝利後のアメリカ。規律を保つのに仮想敵国必要とするのも皮肉なものですが…。

1513年に即位したローマ教皇レオ10世。富豪メディチ家の出身で、何かと派手好き・イベント好きの教皇が行ったのが、ミケランジェロやラファエロといった名だたる芸術家のパトロンになって、ローマの街の各所を芸術的な建築物で彩る「文化の発展」に名を借りた公共事業の乱発。特にラファエロを贔屓にして、自らの肖像画やシスティーナ礼拝堂の壁掛け、バチカン宮殿回廊の天井壁画などを制作させます。彼のおかげでイタリア・ルネサンスは最盛期を迎えますが、財政は火の車。こういう芸術品以外にも、とにかく宴会・お祭り騒ぎが大好きで、あり得ないばかりの浪費を続けた教皇は、「レオ10世は3代の教皇の収入を1人で食い潰した」と言われるほどの濫費ぶり。そのレオ10世が今度手がけようとしたのが、今も残るサン・ピエトロ大聖堂の建設。しかしお金がない。さて、どうするか?そこで思いついたのが、「贖宥状(免罪符)」の販売。「罪深き汝も、これで神の許しを得れば死後、天国に赴ける」と、まるで悪徳霊感商法まがいの商売。

贖宥状を求めて行列を作る人々

こんな愚にもつかない安っぽい御守りみたいなもの、しかしこれが売れました。平均寿命が現代と比べてはるかに短い、そして戦争や疫病などでいつ死ぬか分からないこの時代の庶民たちは、やはり「死後の平安」という言葉に弱いのです。そんな庶民心理に上手く付け込んだこの商売。「グルデン金貨が箱の中でチャリンと音を立てれば、たちまち魂は天国に」。こんな露骨な売り文句に、それでも庶民は殺到。これで建設資金を稼げる、とレオ10世がほくそ笑んだかどうかは定かではありませんが、この欲得まみれの悪質商売が、自らの足元を大きく揺るがし、後の歴史を大きく変えることになるとは思いもよらなかったでしょう。そのローマ教皇庁への反逆の狼煙は、神聖ローマ帝国のヴィッテンベルク、現在のドイツ北東部にある小さな街で燃え上がりました。

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