『100年予測』『続・100年予測』

ジョージ・フリードマン著

ハヤカワ・ノンフィクション文庫

 

今から100年前のこと、1918年のことを鮮明に記憶している人、と尋ねられて手を上げる人は、今現在で少なくとも110歳ぐらいの方でしょう。つまり大半の方にとっては、100年前の出来事というのは歴史の教科書でサラッと習った程度か、小説の中の出来事。最近ではYouTubeでも観ることは出来るのでしょうが、要はリアルで記憶している方はほとんどいない、ということです。

実は私、密かに112歳まで生きることを目標としております。それは単純に「100年前の出来事が記憶の中に残っている。それって一体どういう感覚なんだろう?」とふと思い立ち、それを実際に体感してみたい、というただそれだけのもの。そのための方法はただ一つ。少なくとも、110歳ぐらいまでは生きる必要がある。で、何で112歳なのか?と言いますと、自分のこれまでの人生の記憶の中で、「この歳にはこんな出来事があった」というのが、時系列に沿って割と鮮明になってくるのが、11~12歳の時から。年で言うと1983年~84年。では112歳になる2084年まで生きてみようかな?と、相も変わらずお気楽に思った次第のことです(笑)。

さて表題の本。一口に100年と言っても、長いか短いかは評価は分かれるところ。人間一人の一生ということで考えれば「長いな~」となりますが、地球の歴史46億年というスパンで見たら、100年なんていうのはほんの一瞬。それでもその「ほんの一瞬」のうちに、世の中も世界も大きく変わります。例えば筆者が本分の中でも挙げている事例で、1900年~2000年の世界の移り変わりを見てみると

 

1900年 イギリスは大英帝国として世界の覇者。ヨーロッパにはドイツ・オーストリア・ロシア・トルコと4人の皇帝。中国も清朝時代で皇帝がいて、日本は明治時代。場所によってはまだ人力車も。

1920年 1900年時点の4人の皇帝は全て第1次世界大戦に敗れ、皇帝から追放。ロシア皇帝は革命で倒され、処刑。世界初の社会主義国家・ソ連が誕生。清朝も革命で倒れて中華民国に。イギリス・フランスは戦争に勝つも、国力を消耗して青息吐息。アメリカが一挙に世界最大の工業国に。日本も漁夫の利を得て国際連盟の常任理事国。明治維新からたった半世紀の間の出来事。

1940年 敗戦で打ちひしがれたドイツにはヒトラー政権が誕生し、瞬く間にヨーロッパの脅威に。第2次世界大戦を引き起こし、ポーランドから始まって周辺国を次々と征服して、遂にフランスも降伏。イギリスのみが孤軍奮闘し、イギリス本土は連日連夜、ドイツ軍による空襲。「バトルオブブリテン」。日本も中国との「シナ事変」が泥沼化。

1960年 第2次大戦とその後に始まった「冷戦」により、世界はアメリカの「自由主義陣営」とソ連の「社会主義陣営」に分かれての「冷戦」。戦争で地位が没落したヨーロッパ諸国は、後のEUに連なる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立し、単独では無理でも力を合わせて何とか米ソに対抗を、と意気込む。原爆を落とされ、一面焼け野原となった日本は、この頃には高度成長を果たし奇跡の復興。中国はすでに共産党が内戦に勝って中華人民共和国に。

1980年 ベトナム戦争に負けたアメリカは、財政も悪化し、自信喪失。一方のソ連もアメリカとの軍拡競争が段々とボディブローのように効いてきて深刻化。日本はいつの間にやら英仏など戦勝国を抜いて世界第2位の経済大国に。中国とも国交が回復。

2000年 この間の20年でソ連が消滅。ベルリンの壁も崩壊し、東欧の共産圏も次々と市場経済を導入。世界はアメリカの独り勝ち状態。EU(欧州連合)も正式に発足し、アメリカと並ぶ一大経済圏に。日本はバブル経済が崩壊し、「失われた10年」。それがやがて「20年」と呼ばれるように。中国は鄧小平の「改革開放政策」が効果を奏し、急激な経済発展。

そして2020年…。

未来のことは分かりませんが、2000年~2017年を振り返るだけでも

米同時多発テロ(2001年)、イラク戦争(2003年)、リーマンショック・世界金融危機(2008年)、中国が日本を抜いて世界第2位の経済大国に(2010年)、東日本大震災(2011年)、ギリシャ債務危機(2012年)、ロシアがクリミア半島を強引に併合(2014年)、イギリスがEU離脱、トランプ米大統領誕生(2016年)、北朝鮮が相次ぐミサイル・核実験、戦争の危機(2017年)…。

100年は長くても、このように20年単位、下手したら今なら10年単位、いやもっと短く5年単位で見ても、日本と世界がどれだけ変わったんだろう、というぐらいに変わっています。私が小・中学生だった80年代、大学生から社会人になった90年代を振り返ってみても、もう隔世の感があるぐらいに変わってます。

この本は、ミクロでは自分の人生や日本の社会を、マクロでは世界の変化を、目先の出来事に一喜一憂、振り回されることなく、長期の視点で観ることの必要性も教えてくれます。

そ れもただの当てずっぽうではなく、筆者は「影のCIA」の異名を持つ、ストラトフォーと呼ばれる情報機関の責任者。求められれば米大統領にも情報を提供する実力者です。そんな著者ですから、年単位のズレはあっても、「こういうことが起こり得る」と予測する事件は、結構的を得ています。国力回復に自信を付けたロシアが、クリミア半島併合に動くということを的中。さすがにトランプ大統領の就任までは触れていませんが、「メキシコからの不法移民に手を焼くアメリカは、2020年代にメキシコとの国境に壁を築こうとするだろう」との予測。この本、書かれたのは2014年です。

筆者によると、中国は地政学的理由と高齢化が進む人口構造から、ロシアは人口減少と資源価格頼みの経済構造から、国力は増してもアメリカに代わって世界を牛耳る勢力にはならない、という分析。そして2040年になると、アメリカの覇権に挑戦してくるのが中東のトルコ、東欧のポーランド、そして…日本の三国。

こういうしっかりした研究に基づいた本に書かれていると、「え⁉」という驚きと共に、「じゃあ、そうならないためにはどうしていけばいいのか?」という手も打ちやすい、というものです。色々と思う所はあっても、アメリカとまた戦争する、なんていうのは、どう考えても利口な国がやることではないですからね。

政治家や一部の研究者だけではなく、海外でビジネス展開する企業の経営者の方も必読です。どう思うかは別にして、一度読んでおいて損はないでしょう。先を読んで策を練る、「戦略思考」にも役立つと思われます。

文:小園崇文(ヨーロッパ英雄史作家)

 

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