『ヨーロッパがわかる~起源から統合への道のり』

著者:明石和康 岩波ジュニア新書

 

今、「ヨーロッパ」というと、各地でテロが起こっていたり、ドイツ以外は経済的に低迷していたり、イギリスがEU離脱に向けて進んでいたり、カタルーニャ(スペイン)やスコットランド(イギリス)では独立問題がくすぶっていたりと、あまり明るいニュースは聞きません。

ですが冷静に考えれば、ユーラシア大陸の端っこにちょこっとだけ突き出している小さな半島の中に、GDPの世界トップ10のうち4か国(ドイツ3位、イギリス5位、フランス6位、イタリア8位)が存在し、しかも一人当たりのGDPということになればトップ10のうち6か国がヨーロッパ、トップ20まで枠を広げれば13か国がヨーロッパになります。しかもここに入ってくるのはルクセンブルグやスイス、デンマーク、フィンランドなどの小国ばかり。(データは2016年)

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つまり何だかんだ言っても、ヨーロッパというのは世界的に見るとかなり裕福な地域であり、しかも国だけではなく、一人一人が裕福感・幸福感を感じながら生活できている地域、ということが言えます。しかも面積にして世界の陸地の3.3%、人口にして7%の小さな地域が、です(いずれもEU加盟28ヶ国のみ)。

筆者個人的には、規模は小さいながらも豊かさを生み出しているヨーロッパに学ぶことこそ、すでに少子高齢化社会に突入して、人口が減少していく日本には必要と思うのです。アメリカや中国のような、ビッグサイズの国よりもよほど学ぶ点が多いのではないか?と。

その手始めにヨーロッパを学べるのが本書。著者は在欧経験豊富な元ジャーナリスト。「岩波ジュニア新書」と高校生ぐらいまでを対象にしている本なので、全体的な流れを分かりやすく説明していますし、割合としてはギリシア・ローマ時代から第2次世界大戦までを半分に凝縮し、残りの半分は戦後の統合に向かうヨーロッパから「ベルリンの壁崩壊」、EU誕生、ユーロの導入、ギリシア債務危機まで、比較的最近の記憶に新しい時代に多くのページが割かれているので、とても現代の出来事に結びつけて読みやすい本です。

「ヨーロッパ」の由来には二説。一つはフェニキア(今のレバノン付近)の王女「エウロペ」に一目惚れした全能の神ゼウスが、雄牛に変装してエウロペをクレタ島に連れ去った、というギリシャ神話起源説。

もう一説は、やはりフェニキアで使われていた言葉の「エレプ」。「夕暮れ・夕闇・日が沈む土地」などの意味があり、フェニキアから見て西方のギリシャを指す言葉として使われていて、これが「ヨーロッパ」の起源になったとするもの。ちなみにギリシャ人はギリシャよりも更に北方の未開地(ドイツ辺りか?)を指すのに、「ヨーロッパ」と使っていたらしいです。当時の文明の中心地ギリシャから見れば、その他の地域は未開な野蛮人が住む場所だったのでしょう。ですがはるか後年になって債務危機に陥った際に、その「野蛮人が住む場所」ドイツから、頭ごなしに緊縮財政を言い付けられるのですから、何たる歴史の皮肉でしょう。

余談で付け加えておくと、フェニキアの言葉で「日が昇る地」は「アス」。これが「アジア」の語源となったそうです。聖徳太子の「日出る処の天子、書を日の没する所の天子に…」に似たようなものでしょうか。

16世紀以降のヨーロッパ政治情勢における覇権国の移り変わりも分かりやすく説明されています。ヨーロッパ史特有の、やたら長ったらしい王様や皇帝の名前も出てきません(笑)。

発行年が2013年ですから、イギリスのEU離脱(ブレグジット)は載っていませんが、随所に「イギリスはヨーロッパの中で異質・変わり者」と、パリ駐在が長かったせいか、ややフランス目線もありますが、後のブレグジットを微妙に示唆している箇所もあります。

まずはヨーロッパ史の基本的な流れをサラッとつかむには、とても適した書です。ご興味のある方は、ぜひお読みください。

文:小園崇文(ヨーロッパ英雄史作家)

 

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